厳しい一年のあとの年頭挨拶は、いい年のあとより難しい。これは間違いありません。
去年の不振そのものを長く語る必要はありません。社員が知りたいのは、社長がその一年をどう見ているかです。
2006年からこの仕事をしていると、リーマンの年もコロナの年もありました。厳しい年の年頭挨拶を何度も作ってきて、毎回同じところに行き着きます。
「業績が悪かった」とは、あまり言わない
実際の原稿に「業績が悪かった」と書くことは、ほとんどありません。使うのは「厳しい一年でした」「厳しい状況が続いておりますが」あたりです。
誤魔化しているわけではありません。業績が厳しかったこと自体は、社員も日々の仕事で感じています。ただ、社長が壇上で「うちは業績が悪い」と言い切ると、その場が必要以上に沈む。年明けの一発目にそれをやる意味がありません。
数字は大まかに
去年の数字を細かく出す社長は、厳しい年ほど少なくなります。それでいいと思います。
細かい数字が要る場面は別にあります。年頭挨拶で数字を並べても、聞いた端から忘れます。それより「社長はこの一年をどう見ているのか」のほうが、あとまで残ります。
反省から入ると、社員は身構える
厳しい年だったのだから、まず反省を述べ、責任に触れ、それから今年の話へ。文章としては筋が通っているように見えます。
でも、聞いている側はそうなりません。年始の朝、壇上の社長が反省と責任の話を始めたら、社員は身構えます。次は自分たちへの叱責が来るのではないか、と。そこから今年の方針に切り替わっても、もう頭に入りません。
反省を口にしてはいけないという話ではなく、そこを起点にすると挨拶全体が重くなる、ということです。
語るのは、なぜそうなったか
代わりに置くのが「なぜ」です。
なぜ厳しかったのか。外部環境なのか、自社の判断なのか、両方なのか。ここを社長の言葉で語ると、去年の話がそのまま今年やることの説明になります。「だから今年はここを変える」という話に、無理なくつながる。
反省は去年で完結しますが、「なぜ」は今年の話の入口になります。
「覚悟」は言葉にしなくていい
厳しい年のあとだから、社長として覚悟を示すべきではないか。そう考える方もいらっしゃいます。
ただ、今年どこに力を注ぐのか、何を変えるのかを具体的に語れば、覚悟はそこに出ます。「覚悟を持って取り組みます」と言うより、今年やることを一つずつ語るほうが伝わります。
まとめ
厳しい一年のあとでも、年頭挨拶で話すこと自体は変わりません。去年に触れ、今年を語る。違うのは、去年の触れ方です。
反省に着地させると、挨拶全体が重くなる。「なぜ」に着地させれば、そのまま今年の話になります。
当社では、社長の年頭挨拶の原稿を一件ずつお作りしています。厳しい一年だった、という状況でのご依頼も多くいただいています。お電話で去年のことと今年のお考えを伺い、構成と表現はこちらで組み立てます。




