
個人的な話題で誠に恐悦至極ではありますが、わたくしは〆とか生の鯖が苦手なもので(ついでに云うと切り身を焼いた鯖も好まないもので)、もっぱら鯖街道は避けて歩んできた半生です。が、
焼き鯖寿司は、別っ! まるで別格っ!
ご説明するまでもないかと存じますが念には念を入れて念のため。鯖寿司とは、塩漬けにして〆た鯖の身を酢飯に乗せて木型に詰め、ぎゅぎゅっと押して作られたいわゆる押し寿司、昔の人の知恵もぎゅぎゅぎゅと詰まった日持ち配慮の携行食、でございます。
そんでもって「焼き鯖寿司」とは、その鯖寿司を焼いたもの、まあそのまんまでございますが、厳密に云えば鯖寿司に乗った〆鯖の表面をバーナーの炎で炙ったもの、でありますな。
ただそれだけの工夫、なのです、なのですが、それだけで鯖寿司が全く違った食べ物になる! 香ばしさが深い旨味すら呼び覚まし、酢飯との相性もぐぐぐいっと増すのです!
思い出せば幼少のみぎりよりわたくしめは、バッテラ(おっとこれは方言でしょうか? 鯖の押し寿司のことです)も表面の〆鯖を取っ払い、四角い塊となった酢飯のみを喰らうこと、それを非常に好んでおった次第なのですが、
つまりまあ元より鯖寿司の下の酢飯部分は好みだったわけです(苦笑)、あの適度に塩味の染みた酢飯の、程よく固められたあの押し寿司ならではの口当たりが結構な好物ではありまして。
そのような偏食的な要素も相まって、苦手である上部分の〆鯖にさえ工夫があれば、好みでないはずの鯖寿司だって美味しく食べられるのですねえ。ったく、我ながら現金なものです。
こんな偏った嗜好の持ち主が仲間を見つけようと考えたら、どんな方法が適切なのでしょうか? 現代ならば勿論SNSを活用して呼び掛けるのが手っ取り早いかとは思いますが、それは所詮入口でしかなく、せっかく同好の士と知り合いになれたとして、そのきっかけを次に繋げなければ実際に会って一緒に焼き鯖寿司を食べにゆく、なんて展開へは発展しないものです。
SNSで親交を深め、いざ会おうとなった際、顔も知らない同士が互いを認識するのに手っ取り早いのは、会う前に合言葉を決めておくこと。子供っぽいけれど、これが案外効果的だと思いますねえ。合言葉って、
何か秘密めいていて、お互いの距離をぐっと近づける親密なマジックワード。例えば同じ小学校の卒業生同士が、そうと知らずに誰かの結婚式か何かでたまたま居合わせてひょんなことから言葉を交わす流れになったとしましょう、そんな時ふっと、卒業生しか知らないその学校独自の話題を口にして、相手もそれを知っていたとしたならばどうでしょう? 見知らぬ隣席者だったはずのお互いが一気に親密な心持ちの旧知の間柄のように感じられるのではないでしょうか。
その時お互いが焼き鯖寿司好きであったならもう完璧に親友になっちゃうでしょうけれど、それはま、あまりにご都合主義って話ですわね。
大人になっても、いや大人だからこそ、小さなコミュニティでしか通用しない合言葉の効果って、本当に高いものだと思います。
なんかほのぼのしますしねえ。