第1回で「緊張は敵ではない」という話をしました。第2回で「あなたが思うほど、震えは見えていない」という話をしました。
最終回は、もう少し具体的な話をします。
緊張は消えません。消えなくていい。問題は、「震えたまま、どうやって最後まで話し切るか」です。
原稿は見ていい
まず、よくある質問から。
「原稿を見ながら話していいのか」
答えは「見ていい」です。
原稿なしで話せるなら、それに越したことはありません。でも、PTA会長の挨拶は年に数回。慣れていないのだから、原稿があった方が安心できる。安心できれば、その分だけ内容に集中できます。
ただし、使い方には注意があります。
原稿を「読み上げる」のと「確認する」のでは、印象がまったく違います。
読み上げる──ずっと原稿を見ている。顔が下を向いている。聞き手と目が合わない。声が紙に吸い込まれて、届きにくい。
確認する──基本は顔を上げて話す。次に何を言うか忘れたとき、ちらっと原稿を見る。確認したら、また顔を上げる。
後者の使い方なら、原稿を持っていても「話している」印象になります。
冒頭の一文だけは覚えておく
原稿を持っていても、冒頭の一文だけは暗記しておくことをお勧めします。
なぜか。
壇上に立って最初の瞬間が、一番緊張するからです。マイクの前に立つ。会場を見渡す。数百人の視線がこちらに向いている。この瞬間に原稿を探すと、手が震えて読めなかったりします。
でも、最初の一文が頭に入っていれば、そのまま話し始められる。話し始めると、体が動き出します。最初の一文が出れば、流れに乗れます。
「本日はお忙しい中、卒業式にご参列いただき、ありがとうございます」
この程度の一文でいい。これだけ覚えておけば、スタートでつまずくリスクがぐっと減ります。
頭が真っ白になったとき
話している途中で、頭が真っ白になることがあります。
次に何を言うつもりだったのか、まったく思い出せない。原稿を見ても、どこを読んでいたのかわからない。焦る。余計に思い出せなくなる。
こういうとき、どうすればいいか。
まず、沈黙を恐れないでください。
本人にとっては永遠に感じる3秒の沈黙も、聞き手にとっては「間」に見えます。「今、何か考えているんだな」くらいにしか思いません。
焦って「えー」「あー」と言葉を埋めようとする方が、「困っている感」が出ます。黙って、原稿を確認して、見つかったらまた話し始める。その方がよほど落ち着いて見えます。
次に、原稿の構成を工夫しておくと助かります。
段落ごとに一行空ける。見出しをつけておく。重要な単語に印をつけておく。こうしておけば、真っ白になっても「今どこにいるか」を見つけやすくなります。
そして、完璧に戻ろうとしなくていい。
飛ばした部分があっても、聞き手にはわかりません。原稿通りに話すことが目的ではない。伝えたいことを届けることが目的です。多少順番が変わっても、多少抜けても、最後まで話し切れば大丈夫です。
「大きく出そう」より「届けよう」
緊張すると、声が小さくなりがちです。だから「大きな声で話そう」と意識する人がいます。
でも、「大きく出そう」と思うと、力んでしまいます。力むと喉が締まる。逆に声が出にくくなることがあります。
代わりに、「届けよう」と思ってみてください。
会場の一番後ろにいる人に、この言葉を届けよう。そう思うと、自然と声が前に出ます。大きさではなく、方向の問題です。
声を「出す」のではなく「届ける」。意識の向きを変えるだけで、声の質が変わります。
震えていることを実況しない
緊張しているとき、つい言ってしまいがちな言葉があります。
「緊張しています」「足が震えています」「頭が真っ白です」
正直に言っているだけなのですが、これはあまりお勧めしません。
なぜか。自分の状態を実況すると、聞き手の意識がそこに向かうからです。
言われる前は気づいていなかったのに、「足が震えている」と言われると、足元を見てしまう。「緊張している」と言われると、「そうなんだ」と意識してしまう。
見えていなかったものを、わざわざ見せてしまうことになります。
緊張していることは、言わなくていい。言わなければ、気づかれないことも多い。黙っていて大丈夫です。
終わった後、自分を責めない
本番が終わった後の話もしておきます。
壇上から降りた後、「ああすればよかった」「ここで詰まった」「あの言葉が出てこなかった」と、反省会が始まることがあります。
ある程度の振り返りは、次に活かすために必要かもしれません。でも、自分を責め続けるのはやめてください。
あなたは、緊張する場面で、最後まで話し切った。それは事実です。
完璧だったかどうかは関係ありません。震えたかもしれない。詰まったかもしれない。でも、最後まで話した。壇上に立って、言葉を届けた。それだけで十分です。
PTA会長の挨拶は、プロの仕事ではありません。ボランティアで引き受けた役割です。その役割を果たした。それ以上の何かを求める必要はありません。
緊張したまま完走することがゴール
この連載のゴールは「緊張しないこと」ではありません。
「緊張したまま、最後まで話し切ること」がゴールです。
緊張は消えません。消えなくていい。震えていていい。声が上ずっていていい。顔が赤くなっていていい。
それでも、最後まで話す。伝えたいことを届ける。壇上に立ち、降りる。それができれば、成功です。
そしてそれは、あなたにもできることです。
この回のまとめ
- 原稿は見ていい。ただし「読み上げる」ではなく「確認する」使い方
- 冒頭の一文だけは覚えておく。最初が出れば、流れに乗れる
- 頭が真っ白になっても、沈黙を恐れない。3秒の沈黙は、聞き手には「間」に見える
- 声を「大きく出そう」ではなく「届けよう」と思う
- 震えていることを実況しない。言わなければ、気づかれないことも多い
- 終わった後、自分を責めない。最後まで話し切った事実を認める
連載を終えて
3回にわたって「緊張」について考えてきました。
緊張しない方法は、教えられませんでした。そんな方法はないからです。人前に立てば緊張する。それは変えられません。
でも、緊張との付き合い方は変えられます。
敵ではなく、共にいるもの。消すべきものではなく、あっていいもの。そう思えれば、少しだけ楽になります。
次にあなたが壇上に立つとき、きっと緊張するでしょう。でも、それでいいのです。震えたまま、最後まで話し切ってください。それができれば、あなたの役割は果たされています。
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