
大海に寄せる熱い想いが、そのまま理念となっていることが伝わってきて、雄大な希望が湧いてくる心弾む祝辞作成となりました。
今回の依頼者様は、とある大学の学部長様であり、開設四年目のまだまだ新鮮さあふれる学部から、初めての卒業生を送る、そのお祝いの挨拶をご依頼いただきました。
ご依頼をいただいた当初、卒業という言葉に一瞬きょとんとしたのですが、お話しを伺ってゆくにつれ、深く納得させていただくに至りました。
今年度、開設四年目になる新しい学部はいわゆる国際教養学科であり、学生たちには在学中に、ボランティアと留学で合計二年の海外活動が履修として義務付けられているのだそうです。
それは先行きの不透明な現代の国際情勢を、若い世代がしっかり乗り越えてゆけるよう人材を育むための教育です。
そのような国際性豊かな学部を新設するにあたり、依頼者様は実に十一年もの歳月を費やし、関係各所や保護者の方々への趣旨説明を始めとした準備を積み重ね、根気強く地道なご努力の末、ようやく念願を叶えられたのだそうです。
そこまでの熱意を依頼者様がくじけることなく持続させられたことの背景には、ご自身が学生時代に短期間とはいえ海外留学なさっていた経験があり、その際に感じた高揚感や期待、そしてそれらと同じぐらいの割合で感じた困難さや屈辱感など、日本人が海外で生活し活躍するための基礎体力について、深い思い入れを持っておられるからで、これからの若い世代に少しでも力を貸すことができ、背中を押してやれれば、と語っておられました。
ご当地で名を残す歴史上の人物を挙げ、海外へ出ることが今よりもはるかに困難だった時代に、臆することなく臨み、新しい時代を切り開いていった先人たちの勇気に習いたいと、学部に寄せる想いは相当の熱量であり、お話しを伺いながら何度も胸が熱くなりました。
それほどの「想い」であるからこそ、初めての卒業生を送り出すにあたり、半年前のこの時点から、祝辞にもしっかりと準備期間を設けたいのだと、依頼者様は丁寧にお気持ちを説明くださいました。
半年をかけ、幾度か推敲をお願いするかも知れませんが、と大変恐縮されているご様子でしたが、喜んでご対応させていただきます、とお約束いたしました。
それは心からの本音です。
このように熱い想いをお持ちの依頼者様をサポートすることが、我々の何よりの喜びだからです。
国内の閉塞感は未だに続いており、既に日常化された感があって、かかった靄(もや)が晴れる見通しは感じられません。
そんな中にあって、海外へ飛び出し、自らの手で世界を切り開いてゆく強靭さを育てられることは、勇気の要ることとはいえ非常に希望のある、現代人にとって最も有用な要素であると、深く頷かせていただく大変意義深いお話しでありました。
毎回のことではありますが、様々な境遇にあらせられる方々のお話しを伺うことは、我々にとっても実に有意義なことであり、いつも必ず何かを学ばせていただける大変に貴重な機会です。