年度末のこの時期、当社では卒業式の祝辞の作成依頼を多くいただく。PTA会長として卒業生に届けるはなむけの言葉を、どのような内容にするか。依頼者様と一緒に考えながら原稿を仕上げていく。
卒業生へのメッセージとして、「行動することの大切さ」や「挑戦しよう」という内容を盛り込むアプローチがある。新しい世界へ踏み出す若者たちの背中を押す、ポジティブで力強い言葉。こうしたメッセージが、多くの卒業生にとって励みになるのは確かだろう。
その「一歩」が難しい子もいる
しかし、すべての卒業生が同じスタートラインに立っているわけではない。心身の状態、家庭の環境、それぞれが抱えている事情はさまざまだ。中には、「頑張ろう」「行動しよう」という言葉そのものがプレッシャーになってしまう子もいる。
壇上から届く言葉は、一人ひとりの状況に合わせて変えることができない。だからこそ、どんな言葉を届けるかには慎重でありたいと思う。
「無理をしなくていい」もまた、大人の役割
PTA会長もまた、保護者である。子どもたちを応援する立場であると同時に、子どもたちを守る立場でもある。「挑戦しよう」と背中を押すことだけが役割ではない。「立ち止まってもいい」「休んでもいい」と伝えることもまた、大人として、保護者としての大切な役割ではないだろうか。
これは、祝辞の中だけの表面的な言葉ではない。本当のことだ。
重要なのは、無理をしなきゃいけなくなっている問題を見つけて解決することであり、問題を置き去りにしたまま不必要に強引に進める必要はない。動き出すことも一つの行動であれば、立ち止まることも一つの行動だ。選択の話でしかないのだ。
両方のメッセージがあっていい
「挑戦しよう」と「無理しなくていい」は、矛盾するものではない。どちらも、卒業生を思う気持ちから出てくる言葉だ。
祝辞を聞く卒業生の中には、背中を押してほしい子もいれば、そっと寄り添ってほしい子もいる。一つの祝辞の中に多様な視点を盛り込むことで、聞き手それぞれが自分に必要な言葉を受け取ることができる。そういう祝辞もありである。というか、そういう祝辞がありである。






