最近、友人とこんな話をした。「スピーチライターと通訳者って、どちらも言葉のプロだよね。でも何が違うんだろう?」
言われてみれば確かに、どちらも「言葉を扱う専門職」という点では同じだ。でも実際に両方の仕事を見てみると、似ているようで全然違う。今日はそんな疑問を、ちょっと掘り下げて考えてみたい。
まずは共通点から
この二つの職業、実は根っこの部分では同じことをやっている。それは「橋渡し」だ。
スピーチライターは、話し手の頭の中にあるモヤモヤした思いを、聞き手の心に届く言葉に変える。通訳者は、ある言語で話された内容を、別の言語を話す人に理解してもらえる形に変える。どちらも「Aさんの何かを、Bさんに伝わる形にする」という、いわば翻訳家なのだ。
そしてもう一つ。どちらも「ただ言葉を置き換えるだけ」では仕事にならない。
スピーチライターが「社長は『売上を上げたい』と言っています」なんて書いたら、聞き手は「で?」と思うだろう。その背後にある「なぜ売上を上げたいのか」「それが社会にどんな意味を持つのか」まで汲み取って、人の心を動かす言葉にしなければならない。
通訳者だって、単語をそのまま置き換えるだけじゃダメ。文化の違いやニュアンスを考えて、「この人が本当に言いたいことは何か」を理解した上で訳す必要がある。
でも、やっぱり全然違う
創るか、変えるか
一番の違いは、ここだと思う。
スピーチライターは「創る人」だ。話し手と何時間も話し込んで、その人の価値観や体験を掘り起こし、時にはその人自身も気づいていなかった本音を言葉にしていく。まっさらな紙に、ゼロから文章を書いていく感じ。
通訳者は「変える人」だ。もう存在している言葉を、別の言語に変換する。もちろん単純な作業じゃないし、高度な技術が必要だけれど、基本的には「すでにあるもの」を扱っている。
例えて言うなら、スピーチライターは作曲家で、通訳者は演奏家、みたいな感じかもしれない。
距離感の違い
スピーチライターは、話し手とめちゃくちゃ近い関係になる。その人の癖や価値観、話し方の特徴まで知り尽くさないと、「その人らしい」スピーチは書けない。時には家族よりも、その人のことを理解している場合もある。ちょっと言い過ぎかもしれないが。
通訳者は違う。もちろん発話者のことを理解する必要はあるけれど、あくまで「プロとしての距離感」を保つ。むしろ、誰が相手でも同じクオリティで仕事ができることが大切だ。
昔、通訳者の友人がこう言っていた。「私はメッセンジャーなの。手紙の内容に個人的な感情を挟んじゃダメでしょ?」なるほど、と思った。
責任の重さが違う方向
スピーチライターが書いたスピーチがスベったら、話し手の評価も下がる。つまり、「この人をよく見せる責任」を少なからず背負っている。成功したときの達成感も大きいけれど、プレッシャーもあるだろう。
通訳者の責任は「正確に伝える」こと。個人的な解釈や装飾を加えるのではなく、発話者の意図を忠実に再現することが使命。ある意味、自分の個性を消すことが求められる仕事とも言える。
結局のところ
この二つの職業を見ていると、どちらも「言葉の力」を信じている人たちなんだなあ、と思う。
今度スピーチを聞いたり、通訳を見たりする機会があったら、ちょっとこのことを思い出してみてほしい。きっと、いままでとは違う見方ができるはずだ。
そういえば、友人との会話の最後にこんなことを言われた。「そう言えば、君の会社はどちらにも対応しているよね。楽しそうだね」。
私は微笑みながら心の中で思った。うん、楽しいよ。
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